視神経乳頭陥凹拡大
視神経乳頭陥凹拡大 01視神経乳頭陥凹拡大とは
【動画】視神経乳頭陥凹拡大
健康診断や人間ドックまたは、偶然にコンタクトレンズの定期検査やその他の疾患で眼科を受診し視神経乳頭陥凹拡大の診断を受ける方がいます。視神経乳頭の中央部には生理的にも陥凹がありますが、最大垂直乳頭径に対する最大垂直陥凹径の比(以下C/D比)が0.7以上、左右のC/D比の差が0.2以上で異常拡大と診断されます。(図1)
図1
図2
図3
・正常な右視神経乳頭、C/D比0.4程度です。(図2)
・緑内障の右視神経乳頭、C/D比0.8程度の視神経乳頭陥凹拡大があります。(図3)
この診断で第一に考えられる疾患は緑内障です。緑内障は放置した場合、最終的には失明に至る疾患です。現在日本人の失明原因の第一位はこの緑内障です。緑内障の視野障害はゆっくりと進行し、失われた視機能の回復は不可能です。早く見つけて治療を始めることが最重要です。
光干渉断層計(OCT)が広く普及してから、視機能に異常がない段階でも緑内障を見つけることが可能になりました。視神経乳頭陥凹拡大の診断を受けたら、毎年必ず検査を受けることをお勧めします。緑内障は進行性ですから精密検査の結果、前年異常なしでも翌年は緑内障と診断される可能性があります。
視神経乳頭陥凹拡大 02視神経乳頭陥凹の検査
視神経乳頭陥凹拡大の原因疾患を診断するため、以下の検査を行います。
1.眼圧検査
眼圧の正常値は10mmHgから21mmHgです。正常域より高い眼圧の人は緑内障が強く疑われます。その一方で、眼圧が正常域にあっても、緑内障性視神経委縮が起こる正常眼圧緑内障があり、実に日本人の緑内障の7割を占めています。
2.視野検査
静的視野検査で緑内障に特徴的な視野異常を検出します。
図4
図5
左眼の鼻側上方の視野狭窄(図4)と左眼の絶対暗点拡大と傍中心暗点、鼻側上方の暗点(図5)。2例とも水平経線に接する暗点であり緑内障の特徴を持っています。
3.光干渉断層計(OCT)
緑内障では網膜が菲薄化するため、網膜の厚さを測定し診断します。視神経乳頭周囲と黄斑部で測定します。
図6
左緑内障眼の視神経乳頭から耳側下方に伸びる網膜神経線維層に菲薄化がみられ(図6a 赤色の扇形の箇所&矢印)、黄斑部(網膜の中心部)の上下で厚みの差が生じています(図6b赤色の扇形の箇所&矢印)。菲薄化したその領域は、網膜神経線維の走行に沿った形状をしています。
4.眼底検査
検眼鏡での医師の診察、広角眼底カメラ撮影などで網膜、視神経を検査します。
図7
・右視神経乳頭耳側下縁に網膜出血を認める症例。(図7)
この部分の網膜神経線維層が障害される前兆です。
視神経乳頭陥凹拡大 03緑内障以外の視神経乳頭陥凹の原因となる疾患
1.上方視神経乳頭部分低形成(SSOH)
先天的な上方網膜神経線維の局所的な発達障害。進行はしませんが、緑内障を合併してくる可能性はあるので、経過観察は必要です。
・視神経乳頭血管の上鼻側への偏位、上方網膜神経層の菲薄化を認めます。(図8)
・マリオット盲点(生理的暗点)に連なる下方の視野狭窄。(図9)
図8
図9
2.視神経乳頭小窩
先天的に視神経乳頭に小さな円形陥凹があり、そこから黄斑部にかけて網膜剥離を生じることもあります。(図10 黄矢印)
図10
3.視神経炎や外傷性視神経症の
慢性期の視神経萎縮
左視神経炎の強い乳頭浮腫を認める急性期(図11)と白く視神経萎縮となった慢性期(図12)。
図11
図12
4.網膜中心静脈閉塞症や網膜静脈分枝閉塞症後の視神経萎縮
右眼耳側下方に白線化静脈を認め(図13矢印)、視神経乳頭の萎縮を認める陳旧性網膜静脈分枝閉塞症。
図13
おわりに
日本人の緑内障の有病率は5%です。すなわち20人に1人の割合で緑内障になっているということです。現在は、初期緑内障に対しては視野異常が出る前に診断をつけて、治療を開始するという、予防医学的な管理をすることが可能になりました。この医学の進歩を享受していただくため、自覚症状のない人々が、健康診断を受けることの重要性がますます増しています。