緑内障手術
プリザーフロ®
マイクロシャント
プリザーフロ®マイクロシャント手術 01プリザーフロ®
マイクロシャントとは
プリザーフロ®マイクロシャント緑内障ドレナージシステムは2023年3月に国内承認を得た新しい緑内障手術用デバイスです。
SIBS
プリザーフロ®マイクロシャントは熱可塑性エラストマーであるスチレン-イソブチレン-スチレントリブロック共重合体(SIBS)製です。
- 柔軟性が高い
- 生体安定性、生体適合性が高い
- 心臓血管ステントのコーティングとしての使用実績あり
- 動物由来成分ではない
線維柱帯切除術と同様に白目(結膜)の下に房水の流出路を作製する手術となります。強膜弁の作製、強膜縫合は不要のため、低侵襲で術後合併症のリスクが低下します。
全長8.5㎜のデバイスを強膜から前房隅角に刺入し、角膜輪部後方約6㎜に前房水を誘導します。
フィンにより強膜内で固定され、脱落を防ぐと同時に切開創を防ぎます。先端は斜めにカットされ、角膜側にベベルが向き、内腔入口のデブリを除去しやすくなっています。
プリザーフロ®マイクロシャント挿入術
線維柱帯切除術
プリザーフロ®マイクロシャント手術 02手術適応
薬物療法やレーザー治療などで十分に眼圧下降効果が得られない患者様が適応となりますが、以下の患者様は適応外となります。
禁忌・禁止
- 閉塞隅角緑内障
- 使用部位に結膜瘢痕、結膜瘢痕手術歴、その他の結膜病変(結膜菲薄化、翼状片など)
- 活動性虹彩新生血管(眼瞼炎、結膜炎、強膜炎、角膜炎、ぶどう膜炎など)
- 前房内硝子体脱出
- 前房眼内レンズ
- シリコーンオイル注入眼
慎重適用
- 慢性炎症眼
- 乳児期の先天緑内障眼
- 血管新生緑内障眼
- ぶどう膜炎緑内障眼
- 落屑緑内障又は色素緑内障眼
- 他の続発開放隅角緑内障眼
- 切開を伴う緑内障手術又は毛様体破壊術既往眼
- 白内障同時手術
- 狭隅角眼
プリザーフロ®マイクロシャント手術 03手術について
手術時間は20~40分程度です。
入院期間は3日間を勧めていますが、1泊2日入院や日帰り手術にも対応可能です。
プリザーフロ®マイクロシャント手術 04手術手順
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外眼筋を避け、上鼻側もしくは上耳側ののいずれかの位置で実施します。
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麻酔を施します。結膜下麻酔で結膜を膨隆させます。
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6-8㎜程度の幅で輪部を切開します。8-10㎜の深さ、角度90-120°の範囲でテノン嚢と強膜を剥離します。
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代謝拮抗薬(MMC)を含ませたスポンジを留置します(最大5分)。スポンジを除去し、生理食塩水で洗浄します。
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ダブルステップナイフで強膜浅層から前房までプリザーフロ®マイクロシャントの挿入路を作製します。
角膜輪部から3㎜の位置に、強膜と平行にナイフが透見できる深さ2㎜進めます。
ナイフの先端が虹彩と平行になるように角度を変え、ナイフの先端から4.5㎜まで強膜下に刺入し、フィンを留置する強膜ポケットをします。
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プリザーフロ®マイクロシャントを挿入します。フィン部分が強膜ポケットに入るまで押し込み、先端が前房内にあるのを確認します。前房内におけるプリザーフロ®マイクロシャントの先端長の目安は1.5~2㎜です。前房からの房水流出を確認します。
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テノン嚢および結膜を輪部付近まで引き出して縫合します。
レッドライト治療 05術後合併症とその原因
術後早期
- 低眼圧
・過剰濾過
・プリザーフロ®マイクロシャントの露出
・濾過胞からの房水漏出(結膜縫合不全) - 眼圧上昇
・出血塊/フィブリン等炎症性物質によるプリザーフロ®マイクロシャント閉塞
・プリザーフロ®マイクロシャントの虹彩接触/陥頓
・テノン嚢によるプリザーフロ®マイクロシャント閉塞
術後晩期
- プリザーフロ®マイクロシャントの露出
- 濾過法からの房水漏出(組織の脆弱化)
- 濾過胞感染
- 眼圧上昇
・出血塊/フィブリン等炎症性物質によるプリザーフロ®マイクロシャント閉塞
・プリザーフロ®マイクロシャントの虹彩接触/陥頓
・テノン嚢によるプリザーフロ®マイクロシャント閉塞
・濾過胞の瘢痕化
術後早期は目を押さない、いきまない、転倒に注意してください。
術翌日の眼圧は7mmHg前後、その後1ヵ月程度で10mmHg台前半に落ち着きます。高眼圧、低眼圧の場合には以下のように対処しています。
高眼圧
- 眼球マッサージ
上眼瞼の上から眼球を中心に向かって10秒間圧迫し、目標眼圧になるまで繰り返します。その回数を1セットとし、午前、午後に1セットずつ行うようにします。 - ニードリング
プリザーフロ®マイクロシャントの後端よりも後方で、ブレブナイフや針でテノン嚢を剥離します。 - 濾過胞再建術
ニードリング無効例や濾過胞が固いカプセルとなった拘縮例に行います。
低眼圧
- 前房内ヒアルロン酸製剤注入
眼圧が5mmHg未満の場合、前房内にヒアルロン酸製剤を注入します。 - ブロック・スーチャー
5mmHg未満の低眼圧が継続し、低眼圧黄斑症、脈絡膜剥離などを発症した際に行います。