甲状腺眼症

甲状腺眼症とは

甲状腺眼症(こうじょうせんがんしょう)とは、甲状腺に関連した自己抗体が原因となって炎症が起こり、眼球周辺の脂肪や外眼筋(目を動かす筋肉)が腫れる病気です。甲状腺機能亢進症(甲状腺の働きが異常に盛んになる病気)の人が大半を占めますが、先述の自己抗体を持っていても発症する可能性があります。また、一度発症すると、甲状腺機能が正常化しても進行し続ける場合があります。

発症について

代表的な原因としては喫煙や糖尿病が挙げられ、眼の周囲にある細胞(線維芽細胞)において、甲状腺を刺激するホルモンが増加し、さらに刺激されることで線維芽細胞から、サイトカインという免疫活性物質が放出され、眼周囲組織の異常増殖、脂肪の増生を引き起こします。加えて、活性化した線維芽細胞は、親水性のグリコサミノグリカンという物質を産生し、同じく眼周組織の浮腫(むくみ)も引き起こします。こうした甲状腺眼症の経過には、「炎症期」と「回復期」があります。

炎症期 急性炎症が急激に悪化し、症状が消えて無くなるまでの時期。数か月~数年に及びます。
回復期 炎症が消退し、合併症が前面に出現する時期。

甲状腺眼症を火事に例えると、炎症期にできるだけ早く消火活動(=薬物治療や放射線治療)を行うことによって、回復期の後遺症状を抑えることができ、後々の再建手術でよりきれいに治しやすくなります。また例外的に、甲状腺機能亢進症の治療中に、病状が悪化することがあります。

症状について

眼瞼後退 上下のまぶたが過度に牽引されることで、目を見開いたような顔貌となります。
眼瞼おくれ 下方を視た時に眼球の動きに上まぶたがついてこず、白目の上部分が露出します。
突出 眼球後方の脂肪や筋肉などが増大することにより、眼球が前に出てきます。左右で程度差があることもあります。
眼球運動障害 眼球を動かす筋肉が固くなり、伸びにくくなることによって生じます。重症例になると、物が二重に見え(複視)、日常生活にも大きな支障をきたします。
ドライアイ 必発症状です。結膜の充血、乾燥感、ゴロゴロする、光をまぶしく感じる、などの症状を生じます。
兎眼
(閉瞼困難)
まぶたの異常や眼球突出によって眼が閉じにくくなり、角膜にびらん(傷)や潰瘍(細菌感染)を生じることがあります。
甲状腺
視神経症
甲状腺眼症の約5%に認められます。腫大した筋肉などが原因で、視神経が眼の後方で圧迫されることにより生じます。長期に及ぶと、重度の視力障害が残ることもあります。

治療について

炎症期は病気の勢いを沈静化し悪化を防ぐことを、回復期は機能と整容(形や姿を正しく整えること)の改善を目的とします。

炎症期
回復期

喫煙者の場合は禁煙することが非常に重要です。受動喫煙も避けてください。

ステロイドを短期間かつ大量に投与することによって、リンパ球や白血球を主体とした炎症細胞の浸潤とその免疫反応を抑制し、炎症を軽減させます。治療は3日間の点滴を1クールとし、症状に合わせて2〜3クールに分けて行うこともあります。

ステロイドと同様に、炎症細胞の浸潤とその免疫反応を抑制して炎症を軽減させます。(当院には設備がないため、必要時は対応できる施設にご紹介します)。

複視がひどい場合、主に炎症によって固くなっている外眼筋(目を動かす筋肉)の付いている位置を後ろにずらす手術を行い、眼球の向きを正常な状態へと近づけます。

眼瞼後退に対しては、耳介軟骨移植などによる眼瞼延長術を行います。また、まつ毛が眼球に接触する場合は、角膜を傷つけないように眼瞼内反症手術を行ったりもします。

眼球突出に対しては、眼窩(眼球が収まる頭蓋骨のくぼみ)の骨を削って突出を軽減する、眼窩減圧術を行います。(当院では行っていないため、必要時に専門施設にご紹介します)。