流涙症(涙目)

涙の流れについて

涙はまぶたの外上側にある涙腺から産生されます。まぶたにたまった涙は目元の上下にある涙点から涙小管、涙囊、鼻涙管を通って鼻腔内に排泄されます。

この涙の排水溝は涙道と称されます。まぶたから涙道への排水は、まばたきの時に生じる涙嚢のポンプ機能により促進されます。


流涙症とは

流涙症(りゅうるいしょう)はまぶたから涙がこぼれる症状で、いわゆる涙目です。涙の産生と排泄のバランスが崩れ、まぶたに溜まる涙の量が多いことで起こります。また、逆にまぶたに溜まる涙の量が少ない場合はドライアイになってしまいます。流涙症の原因で一番多いのが、涙の排出経路が塞がってしまう涙道閉塞(るいどうへいそく)という状態です。


涙道閉塞が原因で起こる流涙症

涙道閉塞は、加齢性の変化や慢性的な涙道の炎症で生じることが多く、経過中に感染が合併し、急性涙囊炎を発症することもあります。また、先天鼻涙管閉塞といって、生まれつき閉塞がみられる場合もあります。


急性涙嚢炎(きゅうせいるいのうえん)は、涙道の下流部分(鼻涙管)が閉塞すると、その上流の涙嚢内に涙や分泌物が滞留します。ここに急激な細菌繁殖が起こると、強い腫脹と疼痛を引き起こします。抗菌薬の全身投与を行いますが、腫脹が強い場合は涙嚢切開といって皮膚を切開して菌を排膿する必要があります。急性涙嚢炎後の涙道閉塞治療は、涙道内視鏡手術だと高頻度で再発してしまうため、根治のためには涙嚢鼻腔吻合術という治療が推奨されます。


先天性鼻涙管閉塞症(せんてんせいびるいかんへいそくしょう)は、鼻涙管の鼻腔への出口部分は胎児期に開きますが、開放が遅れたまま出生してしまった状態です。自然に治ることが多く、平均するとだいたい1歳までに90%、2歳までに95%が自然治癒するといわれています。以前は生後6〜12ヶ月頃に、外来処置室にてブジーという医療用の針金で開放していました。しかし、ブジー法は手先の感触のみを頼りに行うため、正しく穿破されないことがあり、誤った方向にブジーを突き刺してしまう仮道形成を生じる危険があります。仮道を生じると涙道閉塞が治らないばかりか、涙道内の細菌を皮下に押し込んでしまい、菌血症を生じてしまう危険があります。最近では多くの場合、1歳半〜2歳程度まで待ち、自然に治らない場合は全身麻酔下に涙道内視鏡で閉塞部位を開放しています。

なお、耳鼻科での副鼻腔手術後や、顔面外傷などでも生じることもあります。また、稀ではありますが、涙道周囲の腫瘍(悪性を含む)によって閉塞が起こる場合があります。その際の診断は、CT・MRIなどの画像診断になりますので、必要と判断した場合は、近隣の医療機関に検査を依頼させて頂きます。


涙道閉塞による流涙症の治療

内視鏡治療は局所麻酔の日帰り手術で行うことができ、体への負担が少ないという利点があります。しかし、再発が多いという欠点があり、病歴が長い方や、急性涙嚢炎の病歴がある方は再閉塞のリスクが高いといわれています。

1 直径0.9mmの極細径内視鏡を涙道内に挿入し、先端からの画像を確認しながら閉塞部位を穿破・開放します。
2 開放に成功したら、シリコーン製の涙管チューブ(ヌンチャク型シリコンチューブ:NSチューブ)を挿入し、留置します。
3 内腔が開放された状態に固まった頃を見計らって(1〜3ヶ月後)、チューブを抜去します。

涙嚢鼻腔吻合術(るいのうびくうふんごうじゅつ)は、再閉塞率が2〜5%と非常に低いことが利点です。涙嚢と鼻腔を隔てる薄い骨を除去し、粘膜同士を吻合して新しいバイパスを作成する術式です。内視鏡ではどうしても開通させられない場合や、チューブを抜くとどうしても再発してしまう方では、この涙嚢鼻腔吻合術が必要となります。皮膚を切開して行う鼻外法と、鼻腔から内視鏡を用いて行う鼻内法があります。


涙道閉塞以外の原因で起こる流涙症

流涙症は、涙道閉塞以外にも様々な原因で生じます。涙が出る量が多い分泌性流涙と涙の排水が悪い導涙性流涙の2つに分けられます。

睫毛内反症・眼瞼内反症

逆さまつげが眼球に当たり、刺激で涙の分泌量が増えます。

炎症

アレルギーやウイルスなどにより結膜に炎症が起こると、その刺激で涙の分泌量が増えます。

ドライアイ

逆の現象のように思えますが、実はドライアイの患者さんで流涙を訴える方は大勢いらっしゃいます。ドライアイが原因で眼の表面に傷ができると、そこに風がしみるなどして反射性の流涙を生じるためです。

結膜弛緩症

白目の表面の粘膜(結膜)がだぶついて刺激を生じます。

涙点狭窄・閉塞

重い結膜炎の後などで、涙点が閉塞してしまうことがあります。

涙小管閉塞・鼻涙管閉塞

鼻涙管閉塞では涙だけでなく眼脂も多くなります。

眼瞼外反症

涙点が浮いてしまうため、涙が涙道に届かなくなります。

顔面神経麻痺

まばたきが弱くなり、排泄ポンプ機能が働きづらくなります。麻痺が高度になると、眼瞼外反症になります。

結膜弛緩症

だぶついた結膜により、涙の涙点への流れが妨げられます。


おわりに

流涙症には複数の原因が関与していることも稀ではありません。それぞれの原因に対して治療のアプローチが異なるため、診察で適切に診断し、治療にあたらせて頂きます。