小沢眼科内科病院

近視進行抑制の特殊眼鏡レンズ(DIMS・HAL)について

近視進行抑制の特殊眼鏡レンズ(DIMS・HAL)について 01近視抑制の重要性

近年、世界中でお子様の近視が急速に増加しています。近視は単に視力が低下するだけでなく、眼球が前後に伸びること(眼軸長の伸長)と強く関連しています。

近視の進行が
もたらすリスク

特に近視が進行し強度近視(-6.00D超)になると、成人になってから以下のような失明につながる可能性のある重篤な合併症のリスクが大幅に高まります。

  • 緑内障
  • 網膜剥離
  • 近視性黄斑症

そのため、小児期に近視の進行を遅らせる(近視抑制)ことは、将来の目の病気のリスクを最小限に抑える上で、極めて重要な治療目標となります。

特殊な眼鏡レンズによる治療は、コンタクトレンズや点眼薬と比較して、非侵襲的で安全性が高い選択肢の一つです。

近視進行抑制の特殊眼鏡レンズ(DIMS・HAL)について 02近視抑制眼鏡の仕組み

近視抑制眼鏡(DIMSレンズ、HALレンズなど)は、「周辺近視性デフォーカス(Myopic Defocus)」の原理に基づいて設計されています。

構造のゾーン 役割と機能
中心光学
ゾーン
遠方視力を確保するゾーンです
瞳孔に一致させるようにフィッテングします。直径約9mm
周辺治療
ゾーン
周辺のエリアには、網膜の手前で焦点を結ぶように設計された、意図的な「近視性デフォーカス」が導入されています。

なぜ「近視性デフォーカス」が近視を抑制するのか?

動物実験や臨床研究では、近視を進行させる原因の一つとして、網膜の後ろに焦点を結ぶ「遠視性デフォーカス」が関わっていることが示唆されています。

この近視抑制眼鏡は、周辺部に「網膜の手前に焦点を結ぶ」こと、眼軸長の伸長を抑制します。

主な近視抑制眼鏡の種類 特徴的な設計
DIMSレンズ
(Defocus Incorporated Multiple Segments)
(ミヨスマート)
中央のクリアゾーンの周囲に、多数のセグメント(小レンズ)が組み込まれた構造です。
+3.50Dのプラスレンズで近視性デフォーカスを生じさせます。
HALレンズ
(Highly Aspherical Lenslets)
(ステレスト)
中央のクリアゾーンの周囲に、高非球面マイクロレンズ(HAL)を同心円状のリングで配置しています。
  • DIMSレンズ
  • HALレンズ

近視進行抑制の特殊眼鏡レンズ(DIMS・HAL)について 03臨床的な効果

近視抑制用の特殊眼鏡レンズは、従来の単焦点眼鏡と比較して、近視の進行を効果的に遅らせることが多くの臨床試験で示されています。

レンズの
種類
評価
期間
主な結果
(単焦点レンズとの比較)
DIMS
レンズ
2年間 近視進行:−0.38D(DIMS) vs −0.93D(単焦点)→ 0.55D抑制(59%)
眼軸伸長:0.21mm(HAL) vs 0.53mm(単焦点)→ 0.32mm抑制(60%)
(文献1)
HAL
レンズ
2年間 近視進行:−0.66D(HAL) vs −1.46D(単焦点)→ 0.80D抑制(55%)
眼軸伸長:0.34mm(HAL) vs 0.69mm(単焦点)→ 0.35 mm抑制(51%)
(文献2)

DIMSレンズ

屈折の変化(D)
眼軸長の変化(mm)

HALレンズ

屈折の変化(D)
眼軸長の変化(mm)

近視進行抑制の特殊眼鏡レンズ(DIMS・HAL)について 04装用方法と遵守の重要性

近視抑制眼鏡の効果を最大限に発揮するためには、装用時間(コンプライアンス)が非常に重要です。

最適な効果を得るための
推奨事項

推奨される装用時間

毎日、起きている時間の12時間以上、できる限り終日装用するようにしてください。

装用時間と効果

HALレンズの研究では、フルタイム(1日12時間以上)で装用したお子様は、パートタイムの装用者と比較して、屈折の変化および眼軸伸長の抑制効果が優れていました。

定期的な交換

お子様の屈折度数(近視の度数)は変化します。処方されたレンズは、視機能の維持と抑制効果の継続のために、定期的な検診を受け、必要に応じて新しい度数に交換する必要があります。

近視進行抑制の特殊眼鏡レンズ(DIMS・HAL)について 05視機能への影響と安全性

近視抑制眼鏡は一般的に忍容性が高く、安全性も高いですが、特殊なレンズ設計による視機能への一時的な影響や変化が報告されています。

短期的な見え方の変化
(慣れるまでの影響)

項目 特徴 許容度
周辺部の
ぼやけ
周辺部の「治療ゾーン」を通して見た場合、視力がわずかに低下する可能性があります。 ほとんどのお子様で許容範囲内です。
初期の
視力低下
HALレンズでは、装用開始直後(10分後)に低コントラスト視力の低下が見られましたが、12ヶ月後には回復し、単焦点レンズと同等の視力となりました。 ほとんどのお子様で許容範囲内です。

長期的な視機能への影響(DIMSレンズの例)

DIMSレンズを24ヶ月間装用しても、中心部の遠方視力は単焦点レンズと比較して影響を受けないことが確認されています。

視機能の
変化
内容 モニタリングの推奨
調節
機能
ピント合わせの精度が向上する傾向が見られました。 なし
両眼視
機能
輻湊近点(近くのものを見ようとする時の目の内寄せ)がわずかに後退する可能性があります。 定期的な輻湊近点の検査が推奨されています。

安全性について

これらの特殊眼鏡レンズは、コンタクトレンズやアトロピンなどの薬物療法と比較して、合併症のリスクが低い低侵襲な選択肢と考えられています。重篤な治療関連の有害事象は報告されていません。

また、低濃度アトロピン治療との相乗効果も認められています。

ご不明な点やご心配な点があれば、いつでもご相談ください。

参考文献

  1. Lam CSY, Tang WC, Tse DY, Lee RPK, Chun RKM, Hasegawa K, et al. Defocus Incorporated Multiple Segments (DIMS) spectacle lenses slow myopia progression: a 2-year randomised clinical trial. Br J Ophthalmol. 2020; 104:363-8.
  2. Bao J, Huang Y, Li X, Yang A, Zhou F, Wu J, et al. Spectacle Lenses With Aspherical Lenslets for Myopia Control vs Single-Vision Spectacle Lenses: A Randomized Clinical Trial. JAMA Ophthalmol. 2022; 140:472-8.
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