色覚異常
色覚異常 01色覚とは
色覚とは、色に関わる感覚のことです。光には波長があり、それぞれ長さが異なります。ヒトが認識できる光を可視光線といい、可視光線の中で波長が異なるため色として認識できます。虹が七色に見えるのはそのためです。
網膜にある色を感知する細胞
網膜には光を感じる、視細胞があります。視細胞には大きく分けて杆体(かんたい)と錐体(すいたい)があります。
錐体は明るいところで働き、色を識別します。
錐体には「赤錐体」、「緑錐体」、「青錐体」の3種類が存在します。
光の中にある波長をそれぞれの錐体で反応し、比較することで色の感覚が生じます。
色覚異常 02色覚異常とは
正常色覚では、3種類の錐体がすべてそろっているので、正常3色覚といいます。色覚異常は3種類の錐体のいずれかが欠損しているかもしくは機能不全である場合に起こります。
赤錐体が欠損している場合を1型色覚、緑錐体が欠損している場合を2型色覚、青錐体が欠損している場合を3型色覚といいます。
いずれかの錐体が働かないことで、色の感覚が異なります。赤色と緑色の感覚は赤錐体と緑錐体の反応の差から生じるため、どちらかの錐体の反応がないとすれば、差自体が存在しません。すると、赤と緑の感覚は生じないということになります。
正常
1型色覚
2型色覚
先天色覚異常
先天色覚異常は遺伝により発症します。遺伝形式としては伴性劣性遺伝(X染色体性劣性遺伝)になります。先天色覚異常は男子の約5%(20人に1人)、女子の約 0.2%(500人に1人)の割合にみられます。
色が全く分からないというわけではなく、色によって見分けにくいことがある程度で、日常生活にはほとんど不自由を感じない方もいます。そのため、検査するまで気づかなかったという方も多いです。
見分けにくい色
いずれかの錐体が働かないことで、色の感覚が変わってきます。「赤と緑の感覚」は赤錐体と緑錐体との反応の差から生じるため、どちらかの錐体の反応がないとすれば差自体が存在しません。一方で、「青と黄の感覚」は赤・緑錐体と青錐体との反応の差から生じるため、赤・緑錐体のどちらかがあれば成り立ちます。
赤錐体と緑錐体は「色の反応」では同じような役割のため、どちらかが上手く働かないと似たような色覚異常が現れます。
東京都カラーユニバーサルデザインガイドラインに詳しい内容が載っています。
また、「どのように色が見えているか」ではなく、「色の区別がつきにくい」と解釈してもらった方がいいと思います。
色覚異常は本当に異常なのか?
男性の5%は色の区別が異なります。なぜ進化の過程で色覚の能力が異なる方が残るように進化したのでしょうか?進化の過程で役に立たない機能は自然淘汰されると考えられます。特殊な色覚をもち、多数とは異なる色の区別ができる能力を備えていることが役に立っていたとも考えられます。
また、ご家族の方は自分の子供が色覚異常であることで心を痛めないでください。考え方的には、色覚が異なっていることは個性であり、運動能力が高い・低い(足が速い・遅い)、音程をとるのが上手・下手(歌が上手い・音痴)などと同じで一つの個性です。他の人と少し違うだけ、色の感覚が異なるだけと伝えてあげてください。
色覚異常 03色覚の検査
色覚検査は大きく分けて3種類にわけられます。
- スクリーニング
- 異常の程度判定
- 色覚異常の確定診断と病型の決定
1.スクリーニング
スクリーニング検査には「石原式色覚検査表」と「東京医科大学式色覚検査表」が当院にはあります。色覚を簡易的に計測するのに用います。
石原式色覚検査表
目的:1型色覚異常と2型色覚異常のスクリーニング
方法:全25表を読んでいただき、誤読数で正常か異常を判定します。
東京医科大学式色覚検査表(TMC表)
目的:1型、2型、3型色覚のスクリーニングと程度判定
方法:検出表を読んでいただき誤読数により、分類と程度を判定します。
a、検出表
b、検出表
c、分類表
d、程度表
2.異常の程度判定
色の異なり方の程度は様々です。「PanelD-15」では色を並べることで、色覚以上の型と程度を分けることができます。
【PanelD-15】
目的:色覚異常の型と程度の分類
方法:色がついているキャップを順番に並べていただき、異常の程度を判定します。
3.色覚異常の確定診断と病型の決定
色覚異常の有無、確定診断に使用します。
スクリーニング検査で色覚検査が疑われても「アノマロスコープ」では正常と判断されることもあります。(当院にはアノマロスコープはありません)
アノマロスコープ
目的:色覚異常の確定診断
方法:中をのぞいて色を上下同じにいていただき、その度合いで色覚異常を判断します。
*当院では実施できません。
色覚異常 04色覚が異なる方への対応
色覚異常には残念ながら治療はありません。
先天色覚異常は自分で自分の異常に気づきにくく、家族や先生、友人に指摘されて「自分の見え方は周りと違う」ことに気づきます。色覚検査の経験がないと “異常” という概念すらないため、漠然とした不安を抱えやすくなります。また、現在の日本の制度では職業選択で困るということが発生します。特殊な職業の場合は現状の制度がどのようになっているか調べることをお勧めします。
- 【色覚異常による制限がある職業】
- 鉄道運転士
- 船舶航海士
- 航空操縦士
- など
現在カラーユニバーサルデザインといって色覚異常の方に配慮した配色のデザインがありますが、まだまだ普及が進んでいないのが現状です。普及が進めば色覚異常の方でも今まで以上に生活しやすい世の中になると思います。
例
色が重なるとわかりにくい
同色で濃淡をつける